携帯を叩き落とされた未咲に早川伶奈が詰め寄る。
密室で伶奈はナイフを出してきていた。
「突き落とすのが自殺に見せかけられていいんだけど。
貴女、幸い、誰かに刺されそうになったばかりらしいから」
「……もう私を狙ってる相手は消えましたよ」
と言うと、あらあら、と伶奈は言う。
「じゃあ、絶対、疑われないよう、貴女の口、完全に塞がないとね」
ねえ、とぞくりとするような色気のある声で呼びかけてくる。
「貴女、なにしにこの会社に来たの?
なんで、その顔なの?
なにを調べに来たの?」
未咲はナイフの刃先を見つめ、黙っている。
「……志帆さんの日記はあれ一冊だけ?」
そう彼女は訊いてきた。
「空き巣も貴女ですか」
「私と志帆さんは、横領を疑われて辞めた。
ちょうど、私は結婚退職するところだったから、横領のことを知っている人たちは、志帆さんを疑った。
でも、志帆さんは、私がやったって知ってたのよ。
だって、自分じゃないから。
どうして、志帆さんは、なにも言わずに辞めたの。
私をいずれ、強請る気だったのかしら?」



