「じゃあ、あいつは未咲と間違われて殺されたのか」

「俺もそう思っていた。

 いや、俺自身が、そう仕向けたんだからな。

 それで、殺した奴が、実はあれは俺の好きな女じゃなかったと気づいて、未咲をまた狙い始めたのかと思ったんだが。

 死ぬ間際に奴は言ったよ。

 殺してない、と」

 え……。

「未咲の姉貴を殺してないし、空き巣にも入ってないと言うんだ。

 あいつがやったことは、未咲を狙ったことだけだ。

 空き巣が入ったのを知って、別の奴が、未咲を狙ってると思い、先を越されないよう、未咲を脅して捕獲しようとしたらしい。

 姉貴のことは、俺が頻繁に尋ねてもいかないし、別の男とも付き合いがあるようだったから、別人だと気づいたと言っていた。

 もうちょっと身持ちの堅い女なら、助かったんだが」
と勝手なことを言う。

 だが、そこで少し自嘲気味になって言った。

「未咲の姉貴を殺したのは、あの男じゃなかった。

 だが、俺があの女を未咲の身代わりにしようとしたのは確かだ。

 だから、俺はもう未咲に会う資格はない。

 ともかく、これでもう、安全だ。

 ……と思う」

 思うかよ、と思ったところで、男は立ち上がり、

「未咲を頼んだ」
と言う。