禁断のプロポーズ

 


 未咲のボストンバッグを取りに夏目は家に戻った。

 未咲が来るまで、一人で暮らしていたのに、今はこの静けさを不気味に感じてしまう。

 落ち着かない。

 未咲は此処に帰ってきてくれるのだろうか?

 ふとそんな不安が頭をもたげた。

 そのとき、カタリ、と音がした。

 ーー誰だ?

 近所の猫とかならいいんだが、と思いながら、家の中を歩く。

 古い廊下を歩くと、幾ら気をつけていても、みしりみしりと音がしてしまう。

 未咲の部屋の障子が開いていた。

 開けていたろうか、と思いながら、そうっと中を覗き込む。

 最も障子なので、向こうからはバレバレだろうが。

「……誰か居るのか?」

 中には普通に男が座っていた。

 ラフな格好をした金髪碧眼の男。

「遅かったな」
と言う。

「未咲にボストンバッグを取って来いと言われたんじゃなかったのか」