禁断のプロポーズ

 


 夏目とともに、克己も帰った。

 智久のベッドの横、丸椅子に腰掛けた未咲は、なにも言わない智久に、手持ち無沙汰で呟く。

「林檎、剥きましょうか、とかドラマとかなら言うとこですよね。

 でも、ないんですよね、林檎」

 手術直後なので、見舞客も遠慮してまだ来ていない。

「林檎、食べてもいいのか?

 そもそも最近、見舞いに来るのに、果物カゴとか持ってくる奴居るのか?」

「さあ?」

「貴方も私も入院とかしませんからね。

 智久さんは、弱そうに見えて、意外と元気だし」

「弱そうに見えてってなんだ?」

「いや、色白いし、病弱な王子様って感じなんですけど」

 中身は悪魔だが。

「王子って言ったら、水沢だろう」

「あれも悪どい王子様ですよね……」

 軽すぎるし。

 なかなか中身と外見のそろった人間って居ないものだな、と思う。

 まあ、完璧な人間は苦手だが。

「夏目は王子じゃなくて、武士って感じだしな」
と智久が言い、はまり過ぎてて笑ってしまう。