禁断のプロポーズ

「言っても問題はないとは思ったが、なんだか口にする気にならなくてな」
と智久は言う。

 だが、ぼんやりとした未咲はともかく、姉の方は、智久が誰か女の面倒を見ていることを感じ取っていたのではないだろうか。

 それが智久への不信感につながり、浮気に発展したのではないか。

「未咲には言うな」

 わかってる、と夏目は言った。

「はっきり言わなかった俺が悪いんだ。

 違うマンションで、子猿を一匹飼っていると」

「犬じゃなかったのか」
と言いながら、お前が言えなかったのは、何処かに、やましい気持ちがあったからだ、と思っていた。

 女子高生を金で買ったとかそういうことじゃなくて。

 たぶん、智久には最初から未咲に惹かれている部分があったのだ。

「それで全部か?
 別れたのに、他の理由はないのか」

「あるかもしれない」
と言った智久の表情に他のなにを言ったときよりも暗く影が差す。

「あいつは未咲より、会社の内部に通じていたからな」

 それ以上、なにも話す気はないようだった。

 夏目はひとつ、溜息をつき、
「あいつは最後に俺のところに来たが。
 なにかに怯えているようだった。

 なんで俺のところに来たんだろうな」
と訊いてみた。

「お前の方が好きだったからだろう」