禁断のプロポーズ

「でも、こうして、外を歩くのは物騒だよね。
 手、つないでようか?」
と言いながら、克己は、もうつないでくる。

「いや、あの」

 手をつないでいても、ナイフを持ってこられたら、なんにもならないと思うのだが。

「まあ、此処なら、刺されても、すぐなんとかしてもらえそうですけどね」
と白衣の人たちが歩く広い廊下を見渡すと、

「変に腹を決めないでよ」
と苦笑いされる。

「水沢さん、なにかあったら、すぐに私を置いて逃げてくださいね」

「うん。大丈夫、大丈夫。

 僕は専務と違って、薄情だから」
と笑っていたが、恐らく、克己は逃げないだろうと思っていた。

 そうとわかっているから、智久は彼に自分を任せたのだ。

「ねえ、未咲ちゃんさ。

 専務とも、夏目とも駄目になったら、僕と付き合わない?」

「いや、なんですか。
 唐突に」

 っていうか、その両方と駄目になるって設定はなんなんだと思って聞いていた。

「だってさー、僕の恋愛人生が狂ったの、君のお母さんのせいじゃん。

 娘の君が責任取ってよ」

「いや、なんでですか。

 第一、人生狂ったって、単に子供の頃の水沢さんがお母さんのこと、好きだったってだけでしょ?」

 克己は笑顔のまま言った。

「違うよ」

 ……うん。
 追求するのは、よしとこう。

 そう未咲は思った。