禁断のプロポーズ

「そういうことするより、抱きしめてもらったり、キスしたりするだけの方が落ち着いたりするだろ。

 子供に戻って、パパやママにしてもらうみたいにさ」

 そんな感じだよー、と言うが、必死に言うので、かえって怪しい。

 克己はふと、思い出したように、
「そういえば、君のママもよくしてくれてたよ」
と言い出した。

「僕が両親が喧嘩してて、泣いてると。
 よく抱きしめてくれたり、キスしてくれたりした。

 すごくいい匂いがした。

 そのとき感じた感情を、なんとなくそのまま、大人になっても、引きずっちゃってさ」

「水沢さん、それ」

「恋じゃないって言いたいんだろ?」
と克己は笑う。

「いいんだよ。
 それでも、君のお母さんは、僕の理想の人なんだ。

 ま、淫乱女とか罵ってた人とかも居たけどね」

「誰です?」

「えーと、確か、同じ秘書に居た」

「智久さんのお母様?」

「いや、違ったな。

 えーと、でも、誰かの奥さんになった人だよ。

 僕の好みじゃないから、忘れたけど」
と言う。

 おそらく、あの会社の秘書なら、相当な美女だろうが。

 それでも、好みじゃないと、克己の記憶からはすぐに抹消されるらしい。

 ははは……と未咲は力なく笑った。

 私もすぐに消されそうだ、と思ったからだ。