禁断のプロポーズ

「夏目か?
 帰れ」
と中から声がする。

 位置的にキッチンやなにかのあるスペースの壁が邪魔で、ベッドの辺りを見るのはギリギリだったのだが。

 未咲が扉を開けたことで、立ち位置が変わり、智久の顔は見えなくなっていた。

 相変わらず、偉そうなんだよ、と思う。

 歳もそう違わないくせに。

「水沢さんと夏目さんです。

 コーヒーでも淹れましょうか?」

「帰れと言え」
と言う智久を振り返り、未咲は笑う。

「またまたー。
 見舞いに来てもらって、嬉しいくせに」

 智久は怒鳴り返そうとしたようだが、息を大きく吸い込んで、傷口が痛くなったのか、黙った。

「入ってください。
 水沢さん。

 無駄に広いし、此処」

 克己は、そうっと身を乗り出して、中を窺いながら、
「専務のご両親は?」
と訊いてくる。

「もう帰られましたよ」
と言う未咲に、ほっとしたように、

「じゃあ、ちょっとお邪魔しようかな。

 はい、僕と夏目から。
 専務は食べられないだろうけど。

 看病疲れしそうな未咲ちゃんに、クッキー」
と言い、此処に来る前に買った菓子の箱を渡していた。

「水沢〜っ」
と中から低い智久の声がしたが、克己は笑っている。