「地獄のような時間でした……」
戻ってきた智久のベッドの横で、未咲はそうもらす。
途中まではそうでもなかったのだが、智久の母と二人きりになってから、彼女らが帰るまでの三十分くらいが、ちょっとした針のむしろだった。
「それは手術してた俺の言う台詞じゃないのか」
「貴方は麻酔打たれて、寝てただけじゃないですか」
「殴るぞ」
と言われ、
「すみません」
と素直に謝る。
「でも、智久さんのお母さんは、智久さんに、べったりなんですね。
お嫁さん大変そう」
と言うと、
「いや、そうでもない」
と言う。
「気分屋だし、俺のことも大事だが、自分のことが一番大事な人だから」
今だって、俺の顔見たら、安心して、習い事に行ったじゃないか、と言う。
「普通、今日くらい付いてるだろう?
お前、代わりに泊まれ」
と言われたので、
「此処、完全看護ですよ」
と言ってやると、
「薄情だな」
と顔をしかめる。
「嘘ですよ。
泊まりますよ。
でも、私が此処に居ると、またさっきの男が来ませんかね?」



