禁断のプロポーズ

「志貴島って本名なの?」

 房江は、突然、気は確かか? というようなことを言い出したが、なんとなく、意図は見えていた。

「本名ですが、元の名前は違います。

 志貴島は私を育ててくれた養父母の名字です。

 母は昔、うちの秘書室に」

「そうね。
 よく似てるわね、あの売女に」
と房江は素敵な笑顔で言ってきた。

「でも、貴女は性格違いそう」

 ありがとうございます、と言うべきところなのだろうか。

「でも、この顔の嫁は嫌ね」
と言うので、

「私、ただの秘書ですから」
と言うと、

「どうかしら」
と優雅に笑っている。

 ……どうしよう。
 この人、智久さんにそっくりだ。

 智久と結婚する人間は、あの性格の人間が二人居る家に嫁ぐことになるのか、と同情する。

 桜さん、頑張って……。

 そのとき、ノックの音がした。

 看護師が笑顔で現れて言う。

「手術終わりました。
 こちらからベッドが入りますので」

 そう指示され、房江とともに荷物を避けた。