禁断のプロポーズ




 
 智久の手術は三時間程で終わるようだった。

 出血のわりに、傷はやはり深くはなく、手術が終わったら、普通の病室に入るということだった。

「そんなに長い入院でもないみたいだから、普通の個室でもいいんじゃないか?」
と駆けつけていた智久の父、隆二(りゅうじ)が呑気なことを言い、母、房江(ふさえ)に怒られていた。

 どのみち、普通の個室は満室だったので、特別室になったのだが。

 未咲も智久も刺した人間に心当たりがないと言ったことで、警察は、社内に入っていた泥棒か産業スパイが、未咲に見咎められたと思って、刺そうとしたと思ったようだった。

 未咲が智久が自分をかばって怪我したことを謝罪すると、隆二は鷹揚に笑って許してくれた。

「これで、社内の評判も上がるだろう」
と智久と同じことを言ったが、恐らく、自分に気を使わせないために言ってくれたんだろうな、と未咲は思った。

 手術室の前の廊下をうろうろしていても邪魔になるので、未咲たちは、特別室で手術が終わるのを待つことにした。

 智久の両親に飲み物を買ってきたり、話し相手になったりして、落ち着かない気持ちながらも、あっという間に時間が過ぎる。

 智久の子供の頃のエピソードなど、あとで、からかってやろうと思うものもあったのだが。

 激しい逆襲に遭いそうだから、やめておいた方がいいな、と判断する。

 智久の母に会うのはこれが初めてだったが、智久に瓜二つの綺麗な人で、昔、秘書室に居たという。

 隆二の方は、一、二度会った気がするのだが。

 関連会社の社長なので、これもまた、普段、顔を合わせることはなかった。

 隆二は、第一印象通りの穏やかな人で、社内での智久の話をすると、笑顔で、うんうん、と聞いてくれる。

 仕事の電話がかかったので、隆二が居なくなると、房江が微笑んで未咲に言った。

「貴女、未咲さんっておっしゃったかしら」

「はい。
 志貴島未咲と申します」