「幾らだ?」
と新札でなかったので、結構厚みのある大きな祝儀袋を見て言う。

「四十七万です」

「なんだ、その端数は」
と言いながら、智久はちらとそれを横目に見たあとで、

「いらん」
と言う。

「ええーっ。
 少し返したいんですけどーっ」

「二千万のうちの四十七万がなんになるんだ。

 利子分にもならないぞ」

「ええーっ。
 利子とるつもりですかっ?」

「……債務者のくせに態度でかいな。

 返したいのなら、お前で払ったほうがいいんじゃないか?」

「え」

「俺はお前を二千万で買ったんだ。

 どうしても払いたいなら、お前で払え」

「払って欲しいんですか?」
と訊くと、智久はもう飽きたようにキーボードを叩きながら、

「いや」
と言う。

 じゃあ、訊くな、と思った。

 こちらを見ないまま、
「それ、もしかして、さっきのスクラッチか」
と訊いてくる。

「はい。
 当たってたんです。

 一等五十万っ。

 そりゃ、専務にとっては、はした金かもしれないですけど。

 私は嬉しかったんです。

 当たったってことが、金額じゃなくて。

 だから、専務にもこの幸せをお裾分けですっ」