禁断のプロポーズ

「でも、克己さんは、この箇所で引っかかった。

 おねえちゃんの部屋をよく知ってるってことですよね?

 表向きは、そんなに仲良かったわけではないみたいなのに。

 おねえちゃんの日記にも貴方の話はあんまり出てきませんから」

 克己は笑って、そうだね、と言う。

「ま、いろいろ言い逃れは出来るんだけどね。

 たまたま送っていって、アパートを見ただけだとか。

 それだけでも、あの街を見下ろす記述はおかしいと気づくだろう?」

「普通の人なら、見過ごすかもしれませんけど。

 克己さんは、見過ごさないですよね。

 鋭いはずの夏目さんはなにも気づきませんでした。

 いえ、私に言わなかっただけかもしれませんけど。

 夏目さんは、おねえちゃんの部屋を知らないんじゃないかと思います」

「まあ、そうなんだろうね。

 めんどくさいから、白状するよ。

 おっしゃる通り。

 僕は君のおねえさんと付き合ってたわけじゃないけど、まったく関係がなかったわけでもない。

 だから、あの日記は怪しいよ。

 彼女と深い関係にあった人物に関する関する記述は、恐らく、すべて省かれている。

 最初から見られることを想定していたか。

 或いは、彼女が日記でさえ、それを書くことを憚られる心境だったか」