禁断のプロポーズ

「君のおねえさんは、もうひとつ部屋を持っていた。

 或いは、これは、彼女が付き合っていた男の部屋だ、と思ってるわけだよね?

 じゃあ、僕への疑いは晴れるかな。

 もうひとつ、部屋を借りてやるほどの金もないし。

 僕が住んでる部屋、街、見渡せないし、ベランダに椅子もないから」

「そうなんですか。
 高層マンションのベランダで、お酒とか優雅に呑んでそうなイメージなのに」
と言うと、

「イメージで疑わないでくれる?」
と苦笑いされた。

「おねえちゃんのアパートのベランダに椅子がなくても、それは撤去したのかもしれませんが。

 景色と場所は変えられないですからね」

「それは僕に関しても言えることだよね。

 だから、これが彼女の恋人か……或いは愛人をやっていた男の家だとするなら。

 彼女の相手は僕じゃないことになる。

 僕が彼女と出会ってから、今まで引っ越してないことは証明できるから」

 愛人をやっていた、と克己は、はっきりと言った。

 わかっていたことだが、表情が暗くなる。

「……知らなかった?」

 克己が少し気にするような顔で、こちらを見、訊いてきた。

「そうじゃないかとは思ってました」

「まあ、僕なら、愛人じゃなくて、恋人だけどね。

 権力もないし、結婚もしてないから」