禁断のプロポーズ

 桜は威張ったように腰に両手をやったまま、少し赤くなり、
「うちはママが全部作るから」
と言った。

「ママ!?」

「なによ、悪い?

 ……ママは自分が完璧にやりたい人だから、私が手を出すことを好まなかったのよ。

 だから、小さいときから、お手伝いをしたこともないわ」

 ああ、そういう家庭で育つと、こんな感じの人に、と思った。

 お嬢様で、女王様な感じだ。

 克己が笑って言う。

「まあ、うちの会社の女子社員は、こういう人、多いからね。

 途中でやめても困らないような、おうちのいい人が多いんだよ。

 女子社員は飾り物だと思ってるから」

 また、身も蓋もないこと言い出したな、と思いながら、桜に訊いてみた。

「あのー、桜さん。
 結婚したら、誰が料理を作るんですか?」

「私に決まってるでしょう。
 料理教室にでも通って、完璧に作ってやるわよ」

 作りそうだ。

「でも、お母さんに習ったらどうですか?
 お料理上手なんでしょう?」
と言うと、克己が、

「母親に習ったら、喧嘩になるよね」
と実感を込めて言う。

「そういうものなんですか」

 いささか複雑な家庭環境だったので、その辺のところがよくわからないのだが、と思っていた。