禁断のプロポーズ

「君のご亭主ほど可愛げなくはないと思うけど?」
と包丁を手にしたまま、振り返り言ってくるので、なんとなく、おっと、と逃げながら、

「ご亭主って……。
 夏目さんは可愛いですよ」
と言うと、

「あいつがどう可愛いのか知らないけど。
 そんなところは、君にしか見せないの」
と言われる。

「そうですかねえ?」

「ねえ、あんたたち、いつ、結婚するの?」

 唐突に桜がそう訊いてきた。

「いや……特に決めてないんですけど。

 っていうか、夏目さん、ほんとに結婚する気、あるんですかね?」

 そう言うと、克己が、
「僕には君の方がなさそうに見えるんだけど。
 ところで君たちは料理しないの?」
と言う。

「しません。
 ほら、台所混むと使いづらいでしょ、水沢さん」

「しません。
 私、料理できないから」

 えっ!? と桜の言葉に二人は振り向いた。

「めちゃできそうですよ!? 桜さんっ
 ぱぱっと鯛めしとか作りそうな感じですが」

「何故、鯛めし……」
と克己が突っ込む。

 いや、単に今、食べたかったからだ。