禁断のプロポーズ

「ざっくばらんで面倒見が良くて、素敵な先輩だった。

 桜さんみたいに近寄りがたくないしね。

 ああ、あの人が悪いと言ってるんじゃないんだけど。

 その人、いつも明るい人だったけど、時折、表情を曇らせるようになって。

 会社をやめて、……自殺した。

 気づいていたのに、なにもしてあげられないままだった。

 変ね。

 なんで今、貴女にこんな話してるのかしら。

 きっと顔の似てる貴女がまたやめようとしているからね。

 まあ、貴女はやめても、ちゃんと幸せになりそうだけど」

「灰原さん」

 俯き、廊下の床を見つめていた灰原に未咲はいきなり抱きついた。

「えっ。
 ちょっとっ。

 なんなの、貴女はっ。
 もう〜っ」

 そう言いながらも、灰原は嫌そうではなかった。

「大丈夫です。
 私、明日の初給料を貰うまではやめませんからっ」

「そ、そういえば、まだだったわね。

 貴女って、ずっと前から居る気がしてたんだけど、なんとなく」

 ありがとうございます、と思っていた。