外の廊下に出た未咲は、大きく伸びをする。
あー、専務室疲れる。
あれだけデカイ態度で、なに言ってんだと言われそうだな、と思ったそのとき、
「おはよう」
と爽やかに克己が声をかけてきた。
「おはようございます。
今日、来られるんでしたよね?」
と微笑みかけると、
「どうしたの?
なんかいいことあった?」
と言われた。
「は?」
「今日はいつもと違うよ」
「そ、そうですか?」
智久に言われたことを思い出し、ぎくりと、頬に手をやってみる。
その仕草を見、克己は、ははは、と笑った。
もしかしたら、智久と同じことを言おうとしていたのかもしれない。
「今日行って、お邪魔じゃない?」
と訊いてくる。
どういう意味で言ったのかわからないが、つい、深読みしてしまい、慌てて答えた。
「お邪魔じゃないですよっ。
楽しみにしてるんですからっ。
今日はなに作ってくれるんですか?」
そう言うと、克己は困ったように笑い、
「君はなにかこう、わんこのようだよね」
と言った。



