禁断のプロポーズ

「あと、普段はない色気があるような気がする」

「普段はないは余計だと思いますが」

 夏目といい、専務といい。

 初めて夏目と関係持った、そんな日に色気がないと連発されるのはどうだろうな、と思っていた。

「お前、夏目とが初めてか」

 疑問系ながらも、なにやら決めつけるような口調だったので、つい、反抗的に、
「どうですかね」
と言ってやると、

「そうなのか?」
と何故か、突っ込んで訊いてくる。

 智久のデスクに手をつき、
「この足長おじさんは、困った人ですね」
と言った。

「子供のそんなことにまで、口を出してくるんですから」

「誰が子供だ」

「ねえ、専務も誰か愛人作ってるんですか」

「……夏目になにを吹き込まれた」

「まあ、いろいろと」

 智久は、椅子を回して、少し横を向くと、デスクに頬杖をつき、
「ろくな寝物語をしないな、あいつは」
と呟く。

 いや、たぶん、貴方よりはマシですよ、と思っていた。

 この人、そういうときでも、いきなり政治経済の話とか始めそうだから。

「誰なんですか、愛人」
と言うと、横目に見、

「居ると決めつけるな」
と言う。