「まあ、前よりやり甲斐のある仕事を任されるようになったことには感謝してるよ。

 っていうか、俺のさっきの話はスルーか」
と言ってくる。

「え、えーと。
 なんでしょう」
とつい、聞き返してしまった。

 わからなかったのではない。

 正面切って言われて、恥ずかしかったからだ。

「罠だと思った。

 でも、止められなかったんだ。

 お前がまだ俺になにか隠していることがあって、これが本当になにかの罠だとしても――」

 騙されたままでいい。

 そう言った夏目に箪笥に押しつけられ、そのまま口づけられる。

 もっと聞きたいことがある。

 これだけ新しい情報が入ってきたのだ。

 いつもなら、もっと頭が回るはずなのに。

 今はなにも考えられなかった。