禁断のプロポーズ

「油断って?」

「怪しいお前に、つい、油断して、振り回されっぱなしってことだよ」
と言いながら、起こしてくれる。

「怪しくはないですよ」

「ま、第二の女はみな怪しいがな」

 夏目が克己と同じような台詞をもらす。

「それ、どういう意味なんですか?
 計算高いって意味ですか?」

 女性不信で穿った意見の多い克己だけでなく、夏目まで言うとは。

 なにかがその言葉の裏にある気がして、訊いてみた。

「お前はあまり第二の女たちとは親しくないようだから、大丈夫だとは思うが、覚えとけ。

 あの中で、気を許してもいいのは、平山桜くらいだ」

「えっ」

「そういう意味では、お前は勘がいいな」
と言ってくる。

 未咲は唇を噛み締め、黙り込んだ。

「大丈夫か?」
と助け起こしたまま、手をつかんでいた夏目が肩に触れてくる。

 自分がなにに気づいたのかわかったのだろう。

 こちらを窺いながら、
「全員じゃないとは思うぞ。
 だが、俺には中のことはわからない」
と言う。