禁断のプロポーズ

 



「ないですね〜」

 二人であの箪笥中心に探してみたが、なにも出ては来なかった。

 もう一度、イヤリングを見つけた隙間に懐中電灯の光を向けてみる。

「うーん。
 やっぱり、ただ、忘れただけだったのかなあ。

 でも、こんなところに落ちますかね?」

「そうだな」

「あと、考えられるのは、この部屋におねえちゃんがイヤリングを落としてて、誰かに見られそうになって、困った家主が、とっさに突っ込んで忘れてた、くらいしか」

「その困った家主って俺だよな?」

 未咲の上から一緒に隙間を覗き込みながら、夏目が言う。

「この想定だと、女性が二人いりますね。

 落とした女である、おねえちゃん。

 急に現れて、見つけて騒ぎそうになった、もう一人の女」

「待て。
 二人目は、女じゃなくていいだろう」

 っていうか、そんな事実はないぞ、と言われた。

「でも」
と振り返ったが、夏目の顔が真上にあったので、思わず、身を引きかけ、すっ転んでしまう。

 箪笥の角で頭を打った。

「あいたたた」

 後頭部を押さえて起き上がろうとするが、大きな夏目が邪魔で、うまく起きられない。

「……いちいち、動きが間抜けっぽいやつだな。

 だから、こっちもつい、油断するんだ」
と呟きながら、ほら、と手を差し出してくる。