禁断のプロポーズ

 あれを置きっぱなしにしていると、智久に見られるかもしれないと思い、クローゼットに隠しに行ったのだ。

 そして、適当な荷物を持って出た。

 だが、どのみち、智久には読まれていたようだが。

「夏目さん、他に秘密はありませんか?」
と訊くと、

「あるな」
と言う。

「だから、もう話してくださいよ〜。

 っていうか、おねえちゃんはそもそも此処になにをしに来たんですかね?」

「わからない。

 その日、何処かに隠れたかったのか。

 まあ……ともかく、いろいろとあったんだろう」

 なにかを含むように夏目はそう言った。

「思ったんですが、あそこにイヤリングを落としたのは、偶然なんでしょうか?

 結構大きいものです。

 来たとき身につけていて、帰りに片方つけてなかったら、普通、気がつきますよね。

 でも、まあ、泊まったとなると、話は別ですが」
と言うと、

「泊まった泊まった、と繰り返すな」
と嫌な顔をされた。

 自分がやましいのに、態度デカイな、と夏目を睨みながら言う。

「でも、おねえちゃんが二日も同じものを身につけるなんてことはないですかね。

 想定外の宿泊だったのなら、着替えも荷物もなかったでしょうから、それでつけようとした可能性もありますが」

 そう言うと、夏目は溜息をつき、
「そうだな。
 鞄は大きめだった気がするが、いつもあんな感じのを持っていた気もするし」
と言った。

 普段も持ち歩けるような、小型のボストンバックだろうかな、と思った。