禁断のプロポーズ

「此処に泊めてくれとやってきた」

「泊めたんですか?」

「特に断る理由もなかったからな」

「殺してもいいですか?」

「姉さんをか」

「貴方をですよ。
 おねえちゃん、死んでるじゃないですか。

 誰も居ないって言ったのにっ」

「莫迦。
 そんなんじゃない。

 なにか困ってる風で、泊めてくれと言ってきたんだ。

 今、思えば、匿ってくれという雰囲気だった」

 そう夏目は言い出す。

「もしかしたら、それはそのとき、落としたんだったのかもな」
と言う彼を、

「じゃ、なんですぐ言わなかったんですか」
と追求すると、

「……殴られそうだったから」
と言う子供のような答えが返ってきた。

 呆れもしたが、いつも落ち着き払っている夏目が、内心、そんなことでビクビクしていたのかと思うと、おかしくもある。

 だが、笑うと、反省しないので、そこは、ぐっとこらえた。

 夏目は話を切り替えようとするように、日記を手に言う。

「ところで、これ、一人がとってきたのか」

 危ないだろう、と言われたが、いやいや、智久の部屋に連れていけるわけもないではないか、と思った。

 だが、実は、桜はあそこに連れていっている。

 荷物を取りにいったのは、智久の部屋だったからだ。

 だからあまり中は見せないようにした。

 なくなったはずの日記もソファの上に置いてあったことだし。