禁断のプロポーズ

「知るわけないだろう。
 俺はお前がなにを持ってるのかさえ知らないんだから」

 まあ、そんな感じの人だな、と思った。

「夏目さんは、探偵にはなれませんね」
と言うと、

「……ならなくていい」
と言いながら、何故か微笑む。

 智久の笑った顔も可愛いと思うが、夏目だと、どきりとしてしまう。

 私、好きなのかなあ、この人を、と夏目が言うように、他人事のように思った。

『お前は夏目と結婚したら、不幸になるんだ』

 智久の言葉を思い出し、呪いかっ、と思う。

 その言葉を意識していたら、本当に不幸になりそうだ。

 家に入った夏目はまだ機嫌がいい。

「……なんで笑ってるんですか」
と訊いてみたが、夏目は台所に入り、なにも言わない。

「ねえ、なんでですか?」
と追いかけ、強く袖を引いてみる。

 おい、と振り返りながらも、夏目は、
「お前が、夏目さんって、こっちが強要してないのに、呼んだからだ」
と言う。

 思わず、手を離してしまった。

 なにか恥ずかしく、話題を変えるように、まだ手にしたままだったイヤリングを見せ、
「ボウリング大会の景品だったそうですよ、これ」
と言うと、本当に、興味がなさそうに、へえ、と言った。

 冷蔵庫から、昨日の残りを出している。

 白かな、この人?

 本当になにも関係ないのかな?
と考えていると、

「ぼうっとしてないで働け」
と言われた。