禁断のプロポーズ

 


 夏目の家の玄関にある昔風の蛍光灯の外灯が見えたとき、ほっとする自分に気づいた。

 家の中にともる灯りを足を止め、ぼんやり見ていると、後ろからなにかで頭を殴られた。

 強盗!?

 ひったくり!?
と振り返り、睨むと、夏目だった。

 コンビニの袋で軽く小突いただけだったらしいのだが、ビールが入っていたので、痛かった。

「もう〜っ。
 なにするんですか。

 家に居たんじゃないんですか?」
と言うと、

「ちょっとおかずが足りなかったから、買い出しに行ってきたんだ」

 ほら、とビールを一缶投げてくる。

 おおっと、と受け取りながら、
「これがおかずですか」
と言うと、阿呆かと言われた。

 今日は、やたら、莫迦だの、阿呆だな、と言われる日だ。

「私も今からなにか作りますね」

「いや、もう足りてるからいい。
 明日、暇ならお前作れ。

 ……どうした」

 思わず、じっと見つめてしまっていたらしい。

 夏目がそう訊いてくる。

「課長は、いい旦那さんになりますよね」

 智久の態度のデカさと比べてみたせいか。

 しみじみ言ってしまったが、それを聞いた彼は微妙な顔をした。

「他人事みたいに言うな」
とぼそりと言う。