禁断のプロポーズ

「だって、あれ、紫の上を育てておいて、他の男にはやらないっていう、よくわからないお父さんの話ですよね」

「……違うだろう」

 お前には情緒というものがないのか、と言われた。

「智久さん」

「なんだ」

「明日、うちに……って、課長の家ですが、呑みに来ますか? 水沢さんと一緒に」

「お前は莫迦か」

「あの二人と気が合うかどうかはともかくとして、少しは貴方も遊ぶことを覚えた方がいいですよ」

「拾った仔犬に説教されるとはな」
と智久はうつ伏せにふて寝してしまう。

「犬ですか」
と言うと、自分で言っておいて、

「いや、犬じゃないな」
と言った。

「犬というには、忠義心が足りん」

「まだ裏切ってないですよ、今のところ。

 それから、女性を例えるなら、どちらかと言うと、猫じゃないですかね?」

 倒れたまま智久は、腕の隙間からこちらを見、

「色気がなくて、くノいちになれないお前が、猫になれるか。

 色気も可愛げもない。

 せいぜい、犬だ」
と言う。

「……わん」
と不満を込めて、小さく吠えてみた。

 智久が少し笑う。

 こうやって笑うと、意外と可愛い顔してるな、と思うんだけどな。

 大抵、冷ややかにか、なにか企んでそうにしか笑わないからなあ、とその顔を間近に眺める。