禁断のプロポーズ

「考えようによっては、微笑ましいでしょ」

 夏目とともにアパートに行ったとき、日記はこっちにあるのを忘れて、日記がないと騒いでしまった。

 そのまま、引っ込みがつかなくなって、今日に至る。

「思えば、課長とも妙な縁ですよね」
と呟くと、

「あいつにとっては、とんだ厄介事の始まりだな」
と言う。

「まあ、隙のないあいつに隙を作ってくれたことは感謝してるよ」

「どうして、専務は、そんなに課長を意識してるんですか?

 課長は、仕事好きだし、切れ者だけど、出世には興味ありません。

 むしろ、今の待遇を鬱陶しいと思っているようなんですが」

「誰が後継者となるか、決めるのは、本人じゃない。

 そして、本人が望んでいるかとどうかも関係ない」

「断ることはできないんですか?」

「断ったらクビだろう」

「そうなんですか。

 でも、大丈夫ですよ。

 私なら、課長は選びません。

 上に立つ人間は、やはりある程度、野心がないと。

 七光りズの中では、貴方と課長が飛び抜けて優秀ですし。

 課長が脱落するのなら、貴方しか居ませんよ」

 七光りズってなんだ……と眉をひそめられた。