禁断のプロポーズ

 未咲は、ずっと此処から大学に通っていた。

「あのアパートは、隣の騒音が凄くて」

 なんだか落ち着かず、智久が鍵を返せとも言わないので、荷物もほとんどこちらに置いていた。

「贅沢な奴だな」
と言う智久の側に腰を下ろした。

 智久が持っているマンションは此処だけではない。

 彼は、たまにこうして訪れるくらいなので、未咲は、既に此処が自分の家くらいの感じで寛いでいた。

「二千万にこのマンション代に、今のアパートの敷金礼金」

「……細かいですね」

「働けよ、俺のために」

「初給料もらったら、奢りますよ」
と微笑むと、

「俺はいい。
 お前の面倒を見てくれている夏目に奢ってやれ」
と言い出す。

 そう言われると、余程、私の面倒を見るのが大変だったかのように聞こえるのだが。

「最近のあしながおじさんは、就職まで世話してくれますからねえ」
と言うと、智久は、

「誰がおじさんだ」
と言ったあとで、更に日記を捲り、呆れたように溜息をついた。

「未咲、お前の姉貴は、本当に暇な奴だな。

 日記ってのは、そのときの自分の思考や感情を記録しておくものだと思っていたのだが。

 これは、何処の店の何が美味しいとか、店員が好みだとかしか書いてない」

 智久は、勝手に読んでおいて、文句を言ってくる。