「ただいま」
誰も居ない暗闇に向かい、未咲は一応、声をかけてみた。
「おかえり」
とか言われても困るのだが。
まあ、今日は返事があるはずもない。
部屋の灯りをつける。
未咲の部屋は、あの日、出たままになっていた。
ソファの上を見、クローゼットを見、日記を探す。
「ほんとにないような……」
と声に出して呟いたとき、隣の部屋の灯りがついた。
げ、と思う。
すりガラスのはまった扉が開いて、日記を手に男が現れる。
「お探しのものはこれだろう」
「あれっ?
まだ仕事中じゃなかったんですか?」
はは、と誤魔化すように笑うと、
「そう思ってるだろうと思って、今日は早く上がったんだ。
志貴島未咲。
読みが浅いな。
お前の評価はバツだ」
と言われた。
「家でまでやめてくださいよ、専務」
そう溜息をつくと、
「お前こそ、専務はやめろ」
と言う。



