禁断のプロポーズ

「そんな顔をしているということは、夏目に本気になったのか」

「いえ。
 ただ、気持ちが悪いだけです。

 なんだかわからないものが部屋にあるのが」

「じゃあ、夏目に訊いてみればいい」
と言いながら、智久はそれを未咲の手のひらに落とす。

「ところで、専務もボウリング大会の景品を買ったりするんですね」

「あの頃は専務じゃなかったからな。

 だから、俺のことをよく思ってない連中も、わんさか居るだろうよ。

 平山が来たぞ」
と言い様、智久はそこにあったファイルで、いきなり頭をはたく。

「以後、気をつけろ」
と怒った顔で、デスクに戻った。

 誤魔化すにしても、他のやり方があるんじゃないですかねっ、と思ったが、言っても後が怖いので、黙っていた。

 所詮、私は二千万で買われた下僕だしな。

 そう思いながら、

「どうもすみませんでした」
と慇懃無礼なまでに深々とお辞儀をして見せた。

 智久が小声で言う。

「志貴島未咲。
 反抗的。

 評価はバツだな」

 いっそ、クビにしてください、とちょっと思った。