「周りの皆……内心馬鹿にしていた。私の友達は皆優秀で……1人だけ何も特技が無い私を、皆が笑った。いつも、ゆうちゃんは臆病で何も出来ないと馬鹿にされた……だから、自分は臆病で何もできない奴じゃないことを証明するため、この士官学校を滅茶苦茶にしてやろうと思った。そしたら、臆病者だなんて言えないでしょ」

何人かの人は、佐伯さんのことを臆病者だと話していた。でも、こんなことを言っている人もいた。

「佐伯さんは、いざというときはとても勇敢な人だって言っている人がいました。100m走中に転びひどい怪我をして、教官も途中であきらめるだろうと思っていたのに最後まで走り、1人追い抜かした根性のある人とも言われていましたよ」

佐伯さんは、私の話を聞いて驚いていた。犯人だと言われた時よりも。

「皆言っていましたよ。友達思いの人だって。昔からあなたのことを知っている人も言っていました。今はそうでなかったとしても、昔はそうだったんでしょう」

座り込んでいた佐伯さんは、立ち上がる。

「ありがとう。大事なことを忘れていたよ。今から、臆病者じゃないってことを証明しに行くよ!」

笑顔で私にそう言った後、魔物が落としたものと同じ透明な欠片を持つ。そして、走り出した。

私たちを見ていた空操禁書たちのところへと突っ込んでいく。

その直後、バラバラになっている本に欠片を突き刺した。

魔物は一瞬にして消える。

「当分、予知の本は使えなさそうだな」

空操禁書たちは魔物の落とした銀や透明な欠片を集め、去って行った。

「余計な物を落として行った……」

仄矢はそう言って、残った欠片を拾い集める。

「なんで……あんなことを……」

岡野さんが泣いていた。佐伯さんは、命を落としていた。