暇だ。私はとてつもなく暇していた。


私の処分が決まってから約1ヶ月。

屯所から出れない私は土方に直談判しても
外へはいかしてもらえず毎日駄々をこねていた。


「土方〜いいだろ!暇なんだよ!
〈研究が出きるわけでもないしさぁ〉
外に出してくれよ!!
一さんも一緒ならいいだろー」

土「はぁ〈なんなんだよこいつは!毎日毎日!〉ダメだ!お前はまだ疑われている」

ムッカー!
「は?なんなのそれだからそんな事知ってるから一さんも一緒にっつってんのがお前には聞こえないよかよ?え?耳大丈夫か?ここまでいくとさすがに心配になってくるよね。クソ方?」

むかついたので少しだけ毒舌を吐いてみた

土「はぁ。たく、お前はどうしてそうわがままなんだよ。じゃあ今日は斎藤仕事してるから非番の総司に付き合ってもらえ。」

「……………は?何言ってんの?嫌だよあんなガキと外出るなんて。私は一さんとじゃないと外行かない!」

土「お前はわがまま野郎か!!!
  男なら誰と行こうがかんけーないだろ。」

ちっ!なんだよ沖田といったら女の物なんて買えっこないじゃないか。

だから一さんがいいのに。

土「ほら、総司といってこい。」

「断る」

土「ったく!わがままだなぁ。お前着物もそろそろ買わなきゃいけないだろうが!
いーからさっさと行ってこいや!!!」

土方の怒声が響いた。

うるさいよ!!

総「土方さーん!うるさいですよ!」

うっわ!最悪な時に来やがった。

土「おぉー総司!調度いい!入ってくれ」

総「は?」

文句言いながらも入ってくる沖田。

土「総司。お前に一つ頼みがある。
咲見と一緒に街に出て着物を買って来てくれ。」

総「お断りします。てか、だいたいなんで敵かもしれない奴に着物もなんて買ってあげなきゃいけないんですか?おかしいでしょ」

土「帰りに好きなだけ甘味を食ってもいいぞ。金は俺がだす。」

総「えっ!!!甘味!行きます!行きます!行かせてください!!」

変わり身早すぎ。

まぁ大体は予想してたからいいんだけどね







〜〜街にて〜〜


私と沖田は無言で歩いていた。

沖田も甘味は楽しみであろうが敵と思っている私との散歩は好く思わないのだろう。

総「ちょっと、どこの店に入るか決めて下さいよ」

知らないし!ここに来て何日だと思ってんの?

頭おかしいでしょ。

私は、適当に店を選んだ。

中に入るとまぁ、着物がずらりと並んでいた。

因みに沖田は店の外で待っているそうだ。


「いらっしゃい。どんなんお探しではりますか?」

店の奥から店員(この時代に店員なんていたのだろうか?いやいなかった)
がでてきた。

「あーなんか動きやすそうなやつを選んでもらえると助かるんですけど。」

「動きやすそうな………せやたら、これなんてどうです?あんさんによぉ似合いはってよ?」

店員(仮)は黒地に灰色の帯の着物を出してきた。うん。寝間着にもってこいだ。

「はい、いいですね。………あのぉ。」

「どうなさりはりました?」

「この帯の灰色をそこの群青色の物と取り替えてはいただけないでしょうか」

私は、店の奥にある群青色の帯を指さした。

「…えぇですよ!あんさんほんまええ感性をもっとられはりますなぁ。うちもこの組み合わせは気付きまへんでしたわ」

そういって私に群青色の帯をくれた。

「それと、もう二つほど袴を見立ててもらえるとありがたいんですが。」

店員(仮)はわかったといって袴を撰び始めた。


ふと、奥から声が聞こえた。

「ほ…じゃ……ど。そない………と…て
ええん………?……」

良く聞き取れない。

「構わん。わしが許可する。古高」

次は、はっきり聞き取れた。

古高……………。

やばい。ここは長州の奴らが通う店なのか。

店の、前には沖田がいる。

知れば必ず奥へいくだろう。

そして私への疑いははれる。

しかし、私の頭を祖母の言葉がよぎる。

『えぇ?どんなに苦しーても誰かを見殺しにして生きるんだけはやったらいけんよ。
誰かを盾にして逃げるんだけはいけんよ。
みぃんな大切な命があるんじゃけぇね』

これまで余り人と関わって来なかった私は、たくさんの祖母の教えを使わずして生きてきた。

それが今役立つなんて。

私は、なんも聞いてない。

なんも知らん。

そうしていると店員(仮)が袴をもって
やってきた。

私は、それを買い店員である女の耳元でそっとこういった。

「奥の声がこちらまで聞こえて来ていますよ。もし誰かに気づかれでもしたら大変なことになりかねません。
もう少し小声で話した方が良いとお伝え下さい。」

女は少し驚いてこういった。

「あんさんも長州の人?」
と。

「いいえ、生憎私は、長州と無縁………
と言うより敵である新選組に身を置いてします。」

私がそう告げると女はさらに驚き叫びそうになった。

「しんせっ!」
私は、急いで人差し指を女の唇に当て

「シー。外に連れが待っています。聞かれるとまずい。それに私は、今だ新選組から長州の者では無いのかと疑われる身。
故に監視をされているのです。
もしこの事が彼らにばれると非常に不味いのでどうか私が気づいていた事には他言無用でお願いしたい。」

私が告げると女は頷いた。

「わかりました。しかし、なぜお助けを?」

「母が言ったのです。人を盾にして生きることは恥ずべき行いだと。誰かを見殺しにして自分だけ救われても心の底から嬉しくはないでしょう」

私は、そういって早急に店を、でた。