あれから僕は、ときどき屋上へ足を向けるようになった。


その扉は開いていたり開いていなかったりするけれど、開いているときは大抵アマネさんがいた。


きっと彼女がカギを持っているんだと思う。







「…おはよー」


「おはようございます。」



もう昼休みで、購買で買ってきたお弁当を持参した僕はこんにちはじゃないのかな、と思いつつも朝の挨拶を返した。





「またシャケ?好きだねえ。」


「アマネさんこそ、またイチゴ牛乳ですか?」




彼女がいつも飲んでいるイチゴ牛乳。


その色素にムシが使われていると聞いたときから、僕の苦手な飲み物だ。


アマネさんにそれを言ったら「だから何?かまぼこもよ。」と返された。知らなかった僕はかなりのショックをうけたものだ。





「甘い…」


「いつも言ってますね。飲まなきゃいいのに。」


「これじゃなきゃ嫌なのよ。」




甘い甘い、といつも文句を言いながらもイチゴ牛乳を手放さないアマネさん。


アマネさんがイチゴ牛乳を飲んでいるという様子は、どこかアンバランスなのになぜだかとても似合っていると思った。