葵が私を置いて駆け出してしまい、私は わけがわからず呆然と立ち尽くし 二人を見るしかなかった。
聖奈って人、雅くんと何か関係あるんだよねぇ
私を置いてくほどの人?
葵 なんで…
私の不安な気持ちが足を数歩前に出させる。
私の目に写る二人は何かを話しているようだった。
葵が聖奈の前に立ち、聖奈は柔らかく笑っている。
「 帰ったんじゃないの、聖奈さん 」
「 そのつもりだったけど… 雅、怒るかな 」
葵 なに、話してるの…
「 どうかな、俺は何とも… 兄貴なら たぶん 今日は早く帰ってくると思うよ 」
ねぇ 葵、私を一人にしないでよ…
「 葵くん、雅は今… 誰かと…」
知り合いって どのくらい?
「 一人だよ、あれから ずっと、特定な彼女はいないな 」
早く 戻ってきてよ…
「 そう… 葵くんは?彼女いるの?」
葵ってば!早く戻ってきてってよ~
「 いるよ、彼女。ちょっと待ってて 」
ん? …え、なに、えっ?
葵がこっち来る!
聖奈と話していた葵が 急に私の方に振り返り歩いてくる。
なぜだか私は 後ずさりをしていた。
「 椿、来いよ!」
えっ!? なんか、なに?わかんないけど…
足が勝手に… 逃げる!
私はクルリと方向転換し、私と葵にとって思い入れのある木に私は逃げ隠れた。
「 こら、椿!なんで隠れるんだ!」
だって急に来るからっ
「 わかんないけどっ、人間の本能ってやつ?」
「 アホか!いいから、来いよ 」
「 アホって何よっ 私をどうするつもりよっ 置いてったくせにーっ 」
「 それは、悪かったけど… いいから、来いよ!」
「 だからなんでよっ 」
「 紹介したいからに決まってんだろ!」
え…… そうなの?
木を挟み、やいやいと掛け合っていた私と葵。
いつの間にか聖奈がそばに来ていて 私たちを見て 笑みを浮かべていた。

