葵は玄関ドアを見て 私を見て、小声で私に呟いた。
「 椿、部屋に行っててくれ 」
私がいたら まずい?
「 わかった 」
私は ネコ足で音を立てないよう靴を持ち葵の部屋に行った。
私が部屋に行ったのを確認すると、葵は玄関ドアを開けた。
「 葵くん、久しぶりだね 」
「 聖奈さん…」
「 雅、いる?」
「 まだ帰ってないけど、用事?」
「 ううん… また 来るね。バイバイ 」
葵が聖奈と呼んだ女の人、雅を訪ねてきていたが 会えずに帰って行った。
聖奈を玄関先で見送る葵は そのあと すぐに自分の部屋に行った。
私は 葵が来るまでの間、ただ 正座して じっと待っていた。
「 椿、悪い!」
「 あ、もう いいの? さっきの人 知り合いなんでしょ 」
「 ああ、まぁ… 雅のね… 出かける?」
さっきの人、女の人だったよね…
雅くんのどんな知り合いなんだろ。
彼女… まさかね、だって 彼女がいたら あんな風に連れ込んだりしないよね…
私は葵について行こうと正座から立ち上がると 足が思いの外 痺れていた。
うきゃあぁ~っ… 足、足~
踏ん張れ 私~!
痺れた足はピリピリしつこく感覚を麻痺させ 私を簡単に よろけさせる。
お約束の出来事、葵の背中に ドシッと倒れこみ、盾にした。
「 わっ… 椿!?」
「 ごめ、ごめんねっ… 足が痺れちゃったぁ 」
「 椿は一人で忙しいな、飽きないよ 」
それ、喜んでいいの?
ただのドジなだけだけど…
でも くっつけるのは 嬉しいかも。

