私がインターホンを押すと 葵が玄関ドアを開けてくれた。
ドアが開く瞬間、私の空気がゆっくり低速し、葵がスローに見える。
葵… 1時間も経ってないのに ずこく 会ってなかった感じがするよ。
「 椿?」
「 会いたかった~ 」
「 …お、おう。入って 」
照れた葵も いいっ
「 お邪魔します!」
部屋に入ると、私の部屋とは違う空気を感じる。
男の部屋だ… 葵の生活がここに…
間取りは逆だけど なんか いいな。
彼氏の家に来たって実感するなぁ…
「 俺の部屋 こっち 」
「 うん 」
あ~ ドキドキする、ヤバい!
「 手前の部屋が雅ね 」
へぇ。
葵の部屋に足を踏み入れた私は じーんっとした。
これが彼女の特権なんだよ、きっと。
この一歩が彼女の証みたいな…
は~… 感動。
「 椿、なにしてんだ?」
「 いえ 何も。…特に珍しいものはないんだね、何て言うか…」
「 普通だろ、珍しいものって何だよ、コケシとか?」
「 コケシ?私はマトリョーシカがいいな 」
「 なんだよ、それ。いらねぇだろ 」
「 そんなことないよ?中から何体も出てくるし、面白いよ、可愛いしね 」
どんな会話をしていようと、葵が笑顔を見せてくれるのが嬉しい。
「 ねぇ 葵、私 雅くんに夜来るよう言われたんだけど… テスト半分白紙で出したから 」
「 白紙!? なんでまた… あんなの簡単だったろ、椿のだけ違う問題だったのか?」
まさか、そんなはずないけど。
話した方がいいよね、葵には…
「 あのね 葵、図書室での事を玲音が つい喋って 雅くんと密会してるって…
笑里がテスト中に教えてくれたの。
帰りは玲音と偶然会って、勘違いしたままで 私の事 諦めないって…」
「 ……西脇、バカだな 」
そのとおりです!

