お隣さんと内緒の恋話


静かな授業は 終わりを告げるチャイムでざわつく。

私は結局 本を見るより、本を読む葵をチラチラ見てばかりいた。

目が合えば勝手にドキッとし、照れては また 見つめる。


何してんだか ほんと…


みんなが本を片付け図書室を出て行くが 葵がまだ座ったままで本を見ている。


葵… 本好きなんだ。

私と本、どっちが好き? って聞いたらなんて言うかな。


…そんなの 椿に決まってんだろ。

…葵ったら。


ってか、私バカだわ!呆れる…

本と比べてどうすんのよっ、本だよ、本!


「 椿?」

「 あ、はいっ 」


なんだ、笑里… ビックリ。


「 椿、なんかニタニタしてたけど 顔 大丈夫?」

「 あはは… 別に大丈夫、って ちょっと~ 顔 は大丈夫に決まってるでしょ!」


可愛い顔して毒つくのやめてよね~


葵を気にしながら 笑里と一緒に図書室を出てきた。


「 ねぇ 椿、玲音と何かあったの?」


えっ! どうしよう 言っちゃう?


「 もしかして 告られた?」


なぜわかるっ!


「 笑里… なんでそう思うの?」

「 玲音が椿を好きって知ってたからだけど、気づいてなかったんだね 」


う、そ~!?

誤解ついでな告白って感じだったけど?

玲音… 本気だったんだ……

でも、ダメだよ。

「 どうすんの、椿。玲音 ちょっと変わり者だけど 返事してあげなきゃね 」


変わり者って、まぁ ちょっと変わり者?

けど葵とのこと… 私、ちゃんと言わなきゃ!


「 笑里、玲音に悪いけど… 私 好きな人いるんだ、だから断るよ 」


キョトンとして私を じっと見つめる笑里に私は妙に緊張した。


なに、なになになに!?

素直に言ったけど ダメ?


「 …ふふ。知ってるよ、椿は上山くんが好きなんでしょ?先生じゃなくて、上山ダサ男くんの方ね 」


な…んで!?


私は 大きな口がパッカリ開いてしまった。

な、なんで… 笑里、あんた何者!?


「 図星。可愛いね、椿 」


私の頭を よしよしと撫でる笑里に、私は一言も喋れなかった。