学校で見る雅と、話す雅はまるで今とは違う。
きっと今の雅が素なんだと思う。
「 返事はどうした?」
それに身勝手…
こうなったら 呼ぶしかない!
「 …はい、雅くん 」
「 良くできました 」
は~ 先生を名前で雅くんかぁ…
複雑だよ、もう~
言わないとうるさいもん。
「 椿、ごめんな、こんな兄貴で 」
「 ううん、いいよ、平気 」
葵が 葵ならいいの。
素のままの葵がいるからいいよ。
私が葵に微笑むと、葵は私の手を握ってくれた。
あったかくて、優しく戸惑う手。
私は行きには叶わなかった手繋ぎが嬉しくてたまらなかった。
互いに照れた笑みを見せ合う私と葵を バックミラー越しに雅が微笑み見ていた。
「 うちに着いたら、二人を降ろして 俺は本屋に行って来るから。葵は椿ちゃんの引っ越し手伝えよ?」
「 わかってるよ。でも、雅、夜までには帰って来いよ?一人で 」
うん、うん。
一人でね!女はナシでね。
「 ヤボだな、葵。兄貴を信じろ!絶対 一人で帰ってくる 」
なに、カッコつけてんの…
自宅アパート前に降ろされた私と葵。
雅を見送ってから私の部屋に葵と入った。

