お隣さんと内緒の恋話


差し出された緑茶のパックには葵が飲んでいたのかストローが刺してある。


「 飲んでいいよ 」


葵と言葉を交わすのは初めての私は戸惑った。

2年になり同じクラスになったものの まだ話したことはなかった。

1年の頃から特に変わらずダサ男と噂されている葵は まさに そのまま。

不潔な容姿ではないが 女子からはダサい見かけというだけで避けられている。

恋する相手になるはずもなく、除外。

戸惑う私に手を引かない葵の手から 緑茶を 内心 渋々 受け取った。


「 い、いただき、ます… 」


チュウ… と 一口飲むと 葵の口元が緩んだ。


「 間接キスだな 」


んなっ!?


その言葉に 私は思わず ストローを加えたまま緑茶を中へと吹き込んだ。

パンッと張る緑茶パックが空気を含みストロー口の微かな隙間から漏れてきた。


「 ちょっ、上山 葵!? なんてこと言うのよっ!」


ウネりのかかる髪が葵の目元を隠しているため 口元のニヤリとした笑みが不気味に見えた。


なんなのっ、こいつ!!


「 いらない、これ、返す!」


貰った緑茶を突き出すと、葵は笑みを消した。


「 汚いからいらない 」


きっ、汚いっ!

あ… 確かに…

でも!いらないっ


私は緑茶を握りしめ保健室を出るつもりで一歩踏み出す。


「 まだ授業中だよ?」


うっ……


「 サボりだろ 」


ううっ…… バレてる!