素直な葵は私にされるがまま。
大きな体しているのに、目を閉じている葵を可愛いと思ってしまった。
髪を束ねてゴムで縛り上げる。
ピョンッとおでこの上で跳ね上がる髪にピンクのゴム。
「 葵、出来たよ!似合って…る…」
似合ってるよ、そう言うつもりが、途中言えなかった。
葵が私の腰に手を添え、ゆっくり顔を上げながら閉じた目を開き 私を見た。
あ… 葵?
じっと見つめてくる葵に、私の思考力は止まり始めた。
グッと寄せられる私の腰は、葵の足の間にすっぽりと埋まる。
目… そらせない……
ドキドキ、ドキドキ 、自分で静められない心音で ますます 葵から視線を外せない。
「 椿… 俺…… 」
え…
私を見つめたまま口を開く葵、何かを言おうとするも 言わない。
なに? 葵…
片方の腰にあったはずの葵の手が、私の視界に見えて、上へと伸びてきた。
「 …葵?」
葵の手が私の頬に触ろうとしているのが わかった。
「 椿… 」
これがキスの前触れだと、無知でもわかる。
でも、私の頬に葵の手が触れる前に、インターフォンが鳴った。
葵の手がビクッとし 離れて行く。
なんとなく気まずい私と葵。
私は微かな苦笑と共に玄関に向かい、返事をした。
「 織原、上山だけど 」
先生…
もしかして今の、邪魔した!?
「 葵、先生来たけど… 」
「 雅? 」
そうだと頷くと、葵が玄関に来てドアを開けた。

