お隣の葵宅では、雅が素直に葵に椿との事を しっかり話していた。

殴られ、蹴られ、されるがまま葵の怒りを受け止める雅。

唇や、口の中が切れたのか血が流れる。



「 葵… ごめん 」

「 …なんでだよ、なんでっ! は~… 兄貴が椿を好きだって知ってたよ、気に入ってるだけだって 自分の中でごまかしてきた。
でもなぁ 兄貴がしたことは反則だろ、俺にも椿にも!」

「 言うつもりも、キスするつもりも… でも、好きだから抑えられなかった 」



壁を背に座り頭を抱える葵、床に倒れ転がる雅。


「 ごめん… 」

「 椿は 泣いてる… 電話に出なかったし、たぶん俺を避けるかもしんねぇ 」

「 椿ちゃんは話そうとしてたし、お前を一番に思ってる、いつも、今も… 俺じゃダメだってわかってるのにな… 悪かった、葵 」

「 もう、女を呼んだりすんな、椿の代わりには誰もなれない 」



言われた雅は ふっと笑み見せて頷いた。

椿に気にしてほしい気持ちと、自分の気持ちをごまかすためにしてきた行動。



「 兄貴… 椿を諦めろ、渡さない 」

「 まだガキのくせに… 本気で言うんだな、葵 」



両親が亡くなり、祖母が亡くなってから、二人で支え合ってきた二人。

恋が絡む兄弟ケンカを派手にしても、わかり合える雅と葵だからこそ引く時は引く。

どんなに苦しくても…


「 椿には当分 構うな、俺が椿を… 」

「 そうしろ。俺は嫌われただろうしな 」

「 そう思うか?バカじゃねぇの、椿を甘く見んな!」



ふっと笑みをこぼし、部屋へ戻る雅。

葵は 電話に出なかった椿にメールをした。


明日 学校で会おうと…