会話のない車の中で、刻々と自宅に近づいてくる。

緊張からか お腹がキリキリする。

私は携帯を取りだし握りしめ、葵にメールを打とうとするが、指が動かない。

見つめる画面は言葉なく、指が迷っている。



葵…


その時、雅の携帯が鳴り話す感じでは葵から。

ドキドキが気持ち悪く感じた。


葵と、会えない…

どうしよう…



「 もう、着くから 」


雅に言われ、俯き体が強ばる。

車が駐車場に停まると、私は飛び降りるようにして自宅に走った。

そんな私を雅がどう思ったかなんて、どうでもいい。

葵に会えないと、顔を見られないと自宅に逃げた。

部屋の電気はつけずにいたが、さすがに動きにくく豆電球の明かりだけ。


オレンジの明かりは和みを与えてくれるが、心かグズッていた。


電話が鳴り出して、画面には葵とあるのに、出られない。

いつも嬉しいはずの名前なのに、涙が出てくるだけ。


会いたいのに、会えないよ…

私… 最低だよっ

最低…



電話が鳴りやむと、しばらく静かな部屋で一人悶々としていた。

時間が更けていく中で、隣から バタン! ガタン! やけに激しい物音が壁から響いてくる。


隣の音は何を意味しているのか、私は何も気づかないまま 浴室に行った。