雅から、公園から逃げるように私は走り出した。


「 椿っ!!」



どこなのかわからない道路に沿って ひたすら走った。


葵…


私の頭や心には葵しかいなかった。

間違っているのは 素直に気持ちをぶつけた雅でなく、私の方かもしれない。

優しく、いつも明るい雅に 私の気持ちは浮いていた。



「 葵っ… 」


大きな十字の交差点、青信号に変わると一気に走り抜けた。

でも車で私を追う雅が私の信号待ち中、先を越して 捕まえられた。


雅くん!?


「 椿っ! 危ないだろっ 」

「 ほっといて、帰るんだから、一人で!」



息を切らす私に、雅が冷静に言った。


「 今 一人で帰したら危険だし、それこそ葵が許さないだろ… とにかく 帰ろう、乗りなさい 」


落ち着いて言う雅が、先生に見える。

微笑み、頭をポンと撫で叩く雅。

私は葵に心配かけたくないと、それだけの気持ちで 無言のまま後部座席に乗った。

しばらく互いに会話ないまま沈黙し続け、雅が先に口開いた。



「 自分の気持ちを否定はしない… ほんとの事だから。 ただ、悪かった… 」



窓から見える景色は流れるだけ。

悪かったと言った雅に、私は涙が出て止まらなかった。

雅の気持ちが悪いわけじゃないと わかっているのに、涙が流れる。



誰かを好きで、誰かに思われて…


恋がこんなに複雑とは思いもよらず、戸惑うだけ。



「 雅くん、ごめんなさい… 私 子供だから これ以上 言えない。
でも、雅くんでいてほしい… いつもみたいに、お隣の雅くんでいてほしいの 」



これも 私のほんとの気持ち。

葵が雅との事を知ったら…

私はどうなるんだろう。


ただ 満月だけは ずっとキレイで、空から私たちを照らしていた。