こんなの… 間違ってる。

私は… 葵が好きなのに… ダメっ…



「 んっ、…雅くっん!!」


漏れる息は白く、私は我に返るようにパニックになった。


「 椿ちゃ… 」

「 なんで! なんでなのっ ダメだよ、ってか、おかしいよ! 私 葵と付き合ってるんだよ? なのに、なんでっ… 」



苦しかった。


一瞬でも、ほんの少しでも、雅に対してキスを受け入れた自分が許せない。

葵の笑顔が私の中に溢れて、嫌でも涙が流れる。

雅が悲しそうな顔で、声なく泣く私を抱きしめようとする腕を 私は払い離れた。


葵…


「 私、帰る… 」

「 椿ちゃん! 待てっ 」



葵っ…


「 やっ! いやっ!こんなの間違ってるの、ダメなの… 葵に謝らなきゃっ 」


ごめん、葵…


「 椿! 間違ってない、俺は葵より前にっ… 好きなんだよ、ずっと 思ってた!」



掴まれた腕に、雅の本気が伝わる。

間違ってないと言う気持ちは わかる。

それでも、私には 雅とのキスが間違い。



「 そんなこと言われても… 私は葵が好きっ雅くんの気持ちには答えられない 」

「 そんなの望んでないっ 俺は君が好きなだけだ!」

「 好きなだけ? じゃあ なんでっ なんでキスしたの!! 私も 雅くんも 葵を裏切ったんだよ、傷つけるんだよ!」



葵は 私を許してくれない。

きっと、許してくれない。