時間を携帯で見てみると、10時を回っていた。
「 椿、兄貴の様子見てくるよ 」
「 じゃあ 私も一緒に…」
私は葵の後ろについて自宅を一緒に出た。
お隣である葵の自宅の前に立ち、葵が玄関ドアのノブをゆっくり下へと下ろしてみた。
ガチッと鍵がかかっている音に 葵はムカついたのかガチガチと わざとドアノブを上下させた。
「 葵っ 壊れちゃうよ!?」
「 くそっ… 雅の野郎!!」
「 鍵はないの?あ、窓見てみてたら?」
私の提案に、首を振るものの窓に手をあて開けてみようとした。
「 あ…開いてる…」
葵の言葉に私はすぐさま駆け寄り窓を全開させようとして葵に止められた。
「 え… 葵?なん… 」
なぜ止めるのかと言おうとしたが、変に強ばった顔で私に首を振る葵と同時に、耳に聞こえる微かな声。
誰かいる?
上山先生の彼女の… 声?
静かな夜、お年頃の私と葵の耳には聞こえてはならない、よからぬ艶の声。
時に小さく、時に大きく聞こえる。
寒気混じりな体に、風は優しく吹く。
やだ……
これはまさかの大人情事中?
上山先生が今?
「 …真っ最中、ですか?」
「 だな… 真っ最中 」
こういう場合はどうするもんなの?
上山先生って… なに!?
「 葵… どうしよう?」
「 とりあえず、椿ん家に避難しよ… 」
「 ん、了解… 」
頭の中でしてはいけない妄想がモヤモヤとしてくるのをかき消しながら そっと窓を閉めて退散する私と葵。
部屋に葵と入ると 一気に力が抜けた私と葵は床に転がる。
大人って…
あの上山先生が…
「 椿… 」
葵に ふいに呼ばれ、妙に緊張してきた私が葵を寝転がったまま見ると すぐ横に葵の顔があった。

