私の不安要素を知らない柚奈は雅の部屋をノックしドアを開けた。



「 先生、入るね~ 」

「 玉木… なんだ?」

「 ふふふ。お願いがあります 」


雅の部屋に入り、ドアを閉め言う柚奈は、ニコニコしながら雅に話す。


「 あ~… 玉木? お願いってなんだ?」


雅が聞くと、柚奈は フフンと得意げな笑みを見せながら近づく。


「 先生~ お願いって単純な事なの、名前呼びたいの、椿みたいに 」

「 え… それって 俺?」

「 他にいないですよ?」

「 ああ、まぁ… なんで俺を名前でなんか…」


雅の隣に座る柚奈は 横から雅を覗くようにニッコリして見る。


「 椿だけって ズルいもん、先生の本性知っちゃったし、私も呼びたいの、雅くんって 」


微動だにしない雅だが、柚奈の変に自信タップリな言い方に 何か意図を感じる。


「 玉木、呼びたいのはわかったけど、別に織原だけ特別にはしてないぞ?」

「 特別じゃん、椿の事、先生には特別でしょ?」


はあっと大きくため息つく雅。


「 玉木、あのなぁ 誤解するなよ、織原はお隣で、尚且つ 大家さんの孫娘で、葵も一緒に平日は夕飯食べさせてもらってる。
ありがたい気持ちで 織原を あえて 名前で呼んでるだけだ 」


しっかり話す雅に、柚奈は黙って聞き入れる。

そのわりに首を傾げる柚奈に、雅は眉を寄せる。



「 先生… 私、魅力ない? 何が足りないかな?」


話が反れて 突飛な事を聞く柚奈に、雅は 呆気に取られた。


「 玉木、話が変わってるが、俺が話した事 ちゃんと わかったのか?」

「 わかった… たぶん。でも… 先生、先生みたいに女子に囲まれる人ならわかるでしょ?
私の何が悪くて、何が足りないの?」



事は深刻だと理解する雅は 何をどう話せばいいか 悩む。