お隣さんと内緒の恋話


雅を見ていると、明らかに苦しそうで 辛く感じた。

そっと頬に触れてみると、一瞬和らぐ雅の顔にホッとしたのも束の間。

首がぐっと引き寄せられ、思わず力を入れて止めるが 私は雅に触れてしまった。

私の唇が、雅の口元、口角に。

頭は真っ白、意識は重なる横にある唇。


キスではない、唇が口角に触れただけ。


スーッ…と 眠る雅の腕から逃げ離れ、床にへたり込む。


今… 何?

口じゃないけど、唇があたった?

まさか、だよね…


ガチャ、バタン!と玄関の音に ひどくビクついた私は雅の部屋を慌てて出た。

目の前にいる葵の私を見る笑顔に キュッと胸が締め付けられた。



「 椿、ただい…」

「 葵っ!!」


遅いよ、葵… 遅いよっ


私は飛び付くようにして葵におもいきり抱きついた。


「 椿… どうした?」

「 …ごめんっ、葵っ!!」


素直な私は 言わずにはいられなかった。

現実は事実、アクシデントだとしても 秘密には出来ない。

勢いに任せ私はすべてを葵に話した。

離れたくない私をゆっくり引き離す葵に、私は悲しくなった。

葵の無言が 私に罰を下したと思えた。

涙が嫌でも私を泣かすが、ぐっとこらえて 葵の言葉を待った。



「 ……あとは、俺が看るから 帰っていい 」



スパッと私と葵の間の空気が切られた気がした私は 何も言わず そのまま葵宅を出た。

無言で流れる涙に、私は声を押し殺した。



私が悪いの?

葵を怒らせた…

早くリビングに行ってれば こんな…



ただ涙する私は自宅のベッドで泣いた。