雅をからかってたもりはなく、寝かせるための いわば演技にすぎない。
でもそれは、私のした事とは裏腹に 危機一髪の天罰が下ろうとしていた。
「 さ、寝て… ほら 雅 」
いい子、いい子… なんて 大の大人にしちゃダメね。
先生してるのに、熱には勝てないね。
やっと横になる雅が私の手首を離さないままいたせいで、ぐいっと引っ張られて またしても 雅にくっついてしまった。
ひえ~ 乗っかっちゃったんだけど!
落ち着け、私!
相手は雅くんであって 病人だし!
いきなり雅の熱い手が、私の髪をよけて首後ろに回り 雅の首横に私の顔が埋まる。
ヤバい、ヤバい、ヤバいーっ!!
なんでどうしてこうなるの~
こんなの心臓破裂しちゃうしっ
葵~ 早く帰ってきてよ~
大人のくせに、病人のくせに、勘違いオオカミがいるんだよ~
「 顔… 見せろ… 」
え… いや ダメっしょ!私だし!
私は顔を見せないため ぐっと首に力を込めた。
見せてたまるもんでますかーっ
聖奈さんじゃないってバレちゃうじゃん!
「 陽香… 」
ん? 陽香…
聖奈さんじゃないじゃん、陽香って また誰よ!?
雅くんの本命はいったい誰ですかっ
「 なぁ…」
うわっ、なんて艶出し声!!
熱あるくせに… 耳が溶けるーっ
高熱のせいか呼吸も荒い雅は 私と多数の女たちを代わる代わる呼ぶ。
踏ん張る私の首も さすがに疲れ、一瞬、ほんの一瞬力を抜いたとたん、本能なのか 雅が私の鎖骨あたりを ぐっと押した。
あっ…
見れば雅は目を閉じている。
雅くん、私を見てない?
って事は 夢妄想の中?

