私を誰かと間違えるなんて心外だと思うが、雅は病人。
これも熱のせいだと気を沈める。
「 は… あちぃ… 」
「 待って、お水あるから飲んで!」
熱あると 関節痛んだよね、私もよく うなってたもん。
水を差し出すが 頭を起こせない雅に、私は支えるようにして起こそうとするが、力の抜けている頭は意外と重い。
「 んっ 雅くん、起きれない?」
「 …ん、無理… 飲ませて、葉月…」
「 は、葉月って… 」
この野郎!! また 間違えてるしっ
しかも 今度は葉月? あー、ムカつくわぁ
いやいや、抑えて 抑えて。
雅くんは病人よ、優しく 優しくね…
「 はい、葉月ですよ~ ストロー入れるから飲もうね~」
愛沙に、葉月に… 次は?
お水を飲ませた後、雅は携帯を要求してきた。
「 雅くん、どこにあるの?スーツの上着になかったけど…」
「 雅、だろ? ズボン見てこいよ… くそ、いてぇ… 」
はは~ん、夢うつつで命令っすか、先生。
見てこいよ、だって!だろって?
何様っ
言われた通りズボンのポケットにあった携帯を手にすると、マナーモードにしてあるのか、ブブッと手の中で振動する。
見れば画面に女の名前と一部の文面が読める。
『奈由… 行けたら行く… 』
あっそう、来なくて結構ですわ。
ブブッと また鳴り 嫌でも見えてしまう。
『茅乃… 大丈夫?風邪は…』
風邪? 心配しなくて 大丈夫ですわ。
『 愛沙… 雅が心配よ、会いた…』
愛沙!この人ね… わざわざ 会いに来なくていーですわ。
って言うか 何人に連絡してんの!!

